宇津救命丸株式会社 創業400年超の老舗医薬品メーカー 宇津救命丸株式会社 代表取締役社長 宇津 義博　 (2016年3月取材)

父親との衝突が生んだ 社長就任

聞き手

長く歴史を重ねてきた会社なので、いづれはというのを意識したのはいつぐらいからですか？

宇津

中学、高校ぐらいでしょうか。大学を決めるときに文学系に行きたかったんですけど、親父の方が薬科大学に行けということで、父も祖父も薬科大出身だったものですから、そう言われてこれで、継がなければならないんだなという覚悟というか、そこら辺から意識し出したというところですかね。

聞き手

実際にご入社されたときに周りの方から御覧になると、いわゆる社長の息子さんなんで、ゆくゆくは後継ぎになられる方だとで、周りの方の反応というか。

宇津

非常にやりにくかったと思いますね。私もそうですし、社員もそうですし、今まで会社に入るまでは、社長の息子として見ていたのに急に会社に入ってきたら、新入社員として扱わなければならないので、社員もそうだし、私も戸惑った感じはありましたね。

聞き手

実際に入社をされて、一番最初に任された仕事はどういう仕事だったんですか？

宇津

やっぱり薬剤師だったので、研究室に行って、色んな救命丸の試験とかをやってました。

聞き手

そこから研究者として。

宇津

研究者というほどではないんですけど、試験とかそういうやり方を覚えたという。

聞き手

そのあとはどういった経験を。

宇津

結婚して、工場に行って、工場で薬の製造を学びまして、そこで工員さんが１つ１つ気持ちを込めてね、薬を作っていることが、人々の健康に役立つんだなとということを非常に実感しましたね。

聞き手

社長から御覧になってお父さまというのはどんな方ですか？

宇津

仕事に関しては非常にまじめでしたけれども人のいうことをなかなか聞かないので、息子の意見とかはあまり聞いてくれなかったですね。親父を説得することで色々悩みましたね。

聞き手

お仕事を始められてからも。

宇津

ですね。今はそれが少しは役に立って、根回しというか、どうしたら説得できるか、ということは非常に勉強しました。

聞き手

若いころに手ごわい相手に対してやってらっしゃった。
先代の社長、お父様と仕事上で、ネゴシエーションというか交渉する力とありましたが、どういったところでぶつかったりとかがあったんでしょうか？

宇津

一番は、ずっと救命丸一筋で４００年近くやってきたんですけれども、ある救命丸の中の風邪の効能っていうのが、ある時法律が変わって無くなってしまうことになったんですね。

聞き手

使っちゃいけない成分。

宇津

成分が使えなくなってしまって、その成分を取った時に救命丸の効能も取られてしまったんですね。
風邪の効能が無くなったことにすごい危機感を持って、当時風邪薬を２種類発売したんですね。１つは漢方系の風邪薬で、これはうちの工場で製造していて、もう１つはこれなんですけど、こども風邪薬という新薬系の味の良いイチゴ味の風邪薬で、これはうちで作れないので、富山の会社さんに製造を委託したわけなんです。
で、同時に発売したんですけど、やっぱり漢方薬って子供さんには味がなじめなくて、売り上げはこちらの方が良くなってきたんですけど、父親としては、やっぱりわが子がかわいいわけですよね。うちの工場で作っている風邪くするの方がかわいくてですね、そちらの方に非常に力を入れていたんですけど。私は、将来はこういう薬に変えなくちゃいけないんじゃないかということで、コマーシャルはこちらでやりましょうと言ったんですけど、非常に父が激怒しましてね、お前は裏切り者だというようなことを。

聞き手

会社のためを思って、こうしたいと言ってお父さんに怒られるという。

宇津

お前はうちの会社がどうなってもいいのかとまで言われて、私も愕然としたんですけども、それで私も珍しく変更しましてね。
非常にぶつかったんですね。で、うちの父は厳しくて、非常に怒鳴ったりするんですけど、しばらくすると突然優しくなって、電話がかかってきて、色々慰めたりするんですよ。
その時も実際はそうだったのかもしれないですけど、その時もしばらくしてから、お前の言うとおりにやってみろと言われて宇津こどもかぜ薬のコマーシャルを掛けて、世の中に発売したんですね。そしたら非常にヒットしまして、品切れになるほど売れたんですね。それでその後シリーズ化するきっかけになったんですけれども、父がその１年後ぐらいですかね。
突然お前が社長やれみたいなことになりまして、それがきっかけだったんだと思うんですけど、そういう私が社長になったきっかけもくいう事件がきっかけだったというところです。