株式会社マネーフォワード CMでお馴染み。300万人の家計と20万社の会計を変える“Fintech”企業 株式会社マネーフォワード 代表取締役社長CEO 辻 庸介　 (2015年9月取材)

マネックス証券時代

聞き手

実際ソニーでの経理のお仕事でのご経験があって、もうずっとビジネスをやりたいというふうに思っていらっしゃったという事から、３年ぐらい経った時に、社内で公募されていたマネックスのCEO室への出向のチャンスですか。そこで手を挙げられるわけですよね。

辻

そうですね、経理の道でも、結構魅力的な、例えば５年頑張れば次は国内、海外の工場に赴任とかあるんですよね。ある程度大きな会社で伝統もあるので、レートが出来ていたりするのがあって、それは気に食わなかったんですよね。

聞き手

気に食わなかったんですか。

辻

予定調和的で自分の人生が見えるじゃないですか。何か嫌だなと思って。

聞き手

気質的に言うと、正しく、ザ・ベンチャーって言う感じだと思うんですけど、そういった所が買われて、社内公募で応募されましたマネックスの、希代のベンチャー企業家である、松本社長の所に行かれるわけですよね。

辻

そうですね、はい。

聞き手

むしろソニーにいらっしゃった期間よりも、マネックスにいらっしゃった期間の方が長いですよね。

辻

ずっと長いですよね。

聞き手

９年ぐらいですか。

辻

９年ぐらいお世話になりましたね。

聞き手

はい、当時のマネックスってまだ、今でこそ有名ですけど、まだまだベンチャーですよね。

辻

そうですね、４０人５０人ぐらいの規模で、僕もCEO室という所に移動したんですけど、CEO室も僕しかいなくて、上長は松本さんだったんです。

聞き手

のみだったんですか。

辻

今や１０００名、そのうち６００名ぐらい海外の人なんですよ。完全なグローバル企業で、素晴らしい会社になってますけど、僕が勤めてた時はベンチャーでしたね。

聞き手

いざザ・ベンチャーというような、マネックス証券に入って、しかも、トップに非常に近い所の立場で、仕事するというわけじゃないですか、１８０度環境が変わると思うんですけど、当時どうだったんでしょう。

辻

その辺が、想像力の欠如があってですね、おっしゃって頂いた様に、業種も違うし職種も違うんですよ、まあ分からないですよね、経理しかしてないし、ソニーしか知らないし。何もかも分からなくて、ミーティングで役に立たないので松本さんも多分困ったんでしょうね、議事録書いといてみたいな感じで。議事録すら書けないんですよ。言葉も分からないし、頭のスピードも追いつかないし。だから本当役に立てなかったですよね、初めは。

聞き手

行って失敗したな、とかって思われた事なかったですか。

辻

失敗したなと思った事はないですね。面白かったです、刺激があったし。

何よりこういうビジネスパーソンになりたいっていう人が、松本さんも勿論ですけども、松本さんの他にも何人もいらっしゃって、マネックスの中で、それこそベンチャーになって勢いがあった時なんで、どんどん良い人が入ってきて、こういう人間になりたいなっていう人が周りに結構いらっしゃったので、それはすごく刺激があって、楽しかったですね。

聞き手

そういう時があって、だからこそ今のような大企業になってらっしゃるわけですよね。

辻

いや、まだまだですけど、あの時マネックスで鍛えてもらったのは本当に大きくて、松本社長の近くでやらせてもらったので、社長の意思決定の早さとか、人に対するすごくフェアな所とか、新しいものをユーザーに届けるんだっていう志の高さとか、理想と現実のギャップをどう解決するかとか、本当に身近でいい勉強させてもらったって、お給料貰って良くないんですけど、学ばせてもらったって感じはしますね。

聞き手

間近で見ておられて、成功される経営者、スキルだけじゃなくてこういう所がやっぱり違うなっていうふうに感じられた所ってありますか。

辻

もちろん、頭はかなり凄い回転の速さで、発想が自由で、僕達が議論してたら、全然違う事をおっしゃって、ああなるほどそういう考えがあるなと、僕らは視野が狭いので。それ以上に圧倒的な努力、日々の積み重ねが凄くて、ずっと考えていらっしゃいます、常に動いてらっしゃるし、いつ寝てるんだろっていうような感じだし。あと誠実ですね、ビジネスとかいろんな約束に対して、人に対しても。

そういう所で信頼って、よく松本さんはクリエイティビティーって言うんですけど、信頼って言うのは積み重ねじゃないですか、その積み重ねが圧倒的に努力されているので、気づくと凄いんですけど、やっぱり日々はこう積み重ねなんだなと、まあ傍にいてすごい分かったことで、逆に絶望した事ですね。

聞き手

なるほど、果たして自分はこんなふうになれるのかなという所で、絶望。

辻

なれないですよね。だって頭の良さが違うし、努力も僕よりされてたら、永遠に追いつけないじゃないですか。